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Memory of Night
第4章 過去
親戚がいなかった宵を、志穂はためらうことなく引き取るといった。その日から、宵の家を引き払い自分のアパートに連れていったのだ。
飾り気のない小ざっぱりとした志穂の部屋には、いつも大量の薬があった。
そして、志穂自身も月に一、二度通院をしていて、あの時宵を案内した医師が志穂の担当医なのだと教えてくれた。
だが、病名は言わなかった。
戸籍も変え、宵は正式に志穂の子供になった。名字も変わった。
区域はあまり変わらなかったから、通っていた小学校は転校しなくて済んだけれど。
志穂のことをどう呼んだらいいか戸惑っていた宵に、志穂はできれば母さんて呼んでほしいな、なんて言った。
少し躊躇いながらも、その日からそう呼ぶことにした。
志穂は優しかった。いろいろなことに不必要なほど気を遣ってくれて、過保護すぎるんじゃないかと宵は思ったが、それはただたんに子供の扱いに慣れていなかっただけらしく、しばらく一緒に暮らすうちに徐々にちょうどいい距離を保てるようになった。
それが、宵にとっては嬉しかった。
たくさん話をするようになったけれど、志穂と父の関係について志穂が話すことはなかった。