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恋花火
第16章 バイバイFRIEND
目的地に着いたのは、それから一時間は電車に揺られた頃だった。


それは私のいつも乗車する路線の始発駅


そう、陸先輩の地元だ。


「俺のこと知ってほしいから。とかってベタなことを言ってみる。」


陸先輩って、結構決めるとこ決めるのに、それでいて気取ってない。


またひとつ、彼のことを知ってゆく。


電車を降りるとそこは、潮の香りがしなかった。


「陸先輩はいつも、一時間以上かけて通学してるんですね。」

「そうだよ。マジ死ぬよ。」

「ですよねぇ。朝練もあるし、夜だって…」

「毎日眠くて本当ヤバイから。」


なのにいつも部活の時は誰よりも走ってて、声を出してる。


キャプテンになってからは、一番早く部活に来て、一番遅くに帰っている。


そんな疲れてる中で、私にはいつも笑顔を見せてくれていて。


それって簡単なようで、すごく難しいことだと思う。


「いきなり地元なんか連れてきてごめん。もっと楽しいとこ連れてけばいいんだろうけど…他にわかんないんだよね。」


目が合うとまた、優しく微笑んでくれる。


「…陸先輩の半分は、優しさで出来てますね。」

「あとの半分が気になるんですケド 笑」

「なんだろう…、サッカーと、あとは…」


うまいことが浮かばずにいると、陸先輩は頭をポンポンしてきた。


「あとの半分は、少しずつ知っていって。」


知りたい。


私、もっと先輩のことが知りたい。


こんな気持ちになったのは、人生で初めてのことだ。


……タケルのことは、知りたいとか思う以前に全てを知っていたから


「菜月ちゃん」


陸先輩に呼ばれ顔をあげる。


たぶん私のことを、陸先輩はお見通しなのだろう。


今タケルのことを思い出していたことも、きっと見抜かれている。


なのに陸先輩はまたニコニコしていて______



こういう人に


私もなりたいと思った。





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