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恋花火
第25章 迷子の森
あのあと、混乱の状態に陥った私は


ロクに言葉も交わさずにその場を後にした。


逃げるように立ち去る私に


背中からタケルが何か言ってきたけど______


私は逃げてしまった。


最低だ。


今夜もまた、眠れない夜がやってくる。


このまま朝にならなければいいのに______






誰とも顔を合わせたくなかったけど、当たり前に朝はやってくる。


しかも今日から部活では鬼練習が始まるため、休むわけにはいかない。


ノロノロと身支度を整え


重い腰をあげて部屋を出る。


どんな顔をしてみんなと顔を合わせたらいいのだろう。


もう無茶苦茶だ。


誰も悪くないのはわかっている。


だけど気持ちが追いつかない。


タケルと茜先輩は付き合っていなかった。


むしろタケルはもしかして______





「菜月ちゃん」


駅に着くと、陸先輩が改札口で私を待っていた。


「ごめんなさい…、昨日は失礼な態度を取ってしまいました…。風邪、ひいてないですか?」

「菜月ちゃんこそ…大丈夫?」


その質問に私は答えなかった。


「……ごめんね。タケルも茜も悪くない。一番悪いのは俺だから。」


陸先輩は、ズルいのは自分だとよく言っていた。


今、その意味がわかった。


「みんなの弱みにつけこんだんだ。…どうしても、菜月ちゃんを振り向かせたくて。」


陸先輩はいつもみたいに笑ってくれなかった。


そして笑みのないまま、私に言った。


「菜月ちゃん、本当に好きな人のところに行っていいからね。」


ズルい


なぜ今そんな事を


……ズルい。


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