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恋花火
第27章 tears rain
「だから……、今ならまだ、間に合うと思うから……」


ひとつひとつ言葉を絞り出すように、陸先輩は言った。


「……間に合うって、何がですか?」


「実はさっき、タケルからメールがきた。菜月ちゃんの様子見てやってって…。だからヒーローは俺じゃないんだよ。」



陸先輩


あなたは本当に悪い人


勝手な人


惚れるだけ惚れさせておいてそんな事言うなんて


酷い人だ



「私が好きなのは陸先輩です。例えタケルが傷ついたとしても、茜先輩が苦しんだとしても……」



首に腕を回し


陸先輩を壁に押しつけて強く抱きついた。




"陸先輩は悪者になってもいいくらい、おまえのこと好きだったんだよ"




タケルの声が、頭の中で何度も反芻されている






「……もう、手遅れです。」








それはほんの一瞬の幻なのかもしれない


きっと大人からみたら、そんなのくだらないって思うのかもしれない


だけど私は


私は______



「陸先輩……」


私を見つめる、その瞳が大好きなの


陸先輩の冷静な表情の奥にある熱さが


いつも私を狂わせる


ユリ先輩の言う通り


私たちの恋は人の不幸の上に成り立っているのかもしれない。


わかっていても


離れたくない


離したくない


そばにいたい


……熱い


体の奥底から熱いものがこみ上げてくる


そして私を抱きしめ返してくれる陸先輩も


私よりももっともっと熱い______


「って、先輩すごい熱あるじゃないですか!!」

「え……そうかな?」

「気付いてない!?もう!保健室行きましょう!」

「……やだ。」

「やだってそんな子どもみたいに 笑」

「もう少しだけ、このまま______ 」


そう言って陸先輩は、力一杯抱きしめてきた。


高いお熱の陸先輩の腕は、いつもより弱い力なんだけど


それでも


なによりも力強いこの腕の中


ずっと一緒にいたいと、心から思った。





「……保健室行く。」

「お利口さんだ〜。大会あるし、早く治さなきゃですよ!」


そう言うと陸先輩はククッと笑った。


「早く治して、チューしてエッチしたい。」


……その台詞に、私がお熱です。笑


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