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恋花火
第28章 激アツ微熱
私は小さな頃から


どちらかというと内向的な方だとおじいちゃんに言われて育った。


何かを強く主張するのは得意ではないし


目立つことも好きじゃない。


……だけど


体が、口が、勝手に動く。


「茜先輩っ……」


突然の私の行動に、みんな驚いていた。


私も驚いている。


「いじめないでください!」

「え?」

「私の大好きな人のこと、いじめないで!」


まるで子どもみたい


うまいことが言えない


そんな私に、ユリ先輩はフフッと笑う。


「やだぁ、菜月ちゃんもレズ?」


女の子が女の子を好きになるのは、そんなに悪いことなのだろうか


好きになった人がたまたま同性だっただけなのに。


けれど私もユリ先輩のことをとやかく言える立場ではない。


茜先輩と真正面から向き合っていない私は______


「もしかして菜月ちゃん、陸と茜のこと二股かけてるの?最低だね。」


二股はかけていないが、私は最低だ。


言われなくともわかっている。


茜先輩の気持ちにこたえられないくせに


陸先輩を選ぶのに


正義感ぶってるだけの偽善者。


私は今度こそ何も言えなくなって、自分のつま先を見つめた。


……いつもこうだ。


誰のことも救えず、自分のことばかりで。


どうしたらみんなのようにヒーローになれるの……?






「黙れバーカ」


そんな呟きが、静まり返った部室に響く。


「菜月ちゃんは陸一筋だよ。」


茜先輩が、ユリ先輩の目を見てそう言った。


「ユリ〜あんた陸とタケル君に振られたからって、やつあたりすんのもうやめて?わかった?私は陸ともタケル君ともなんでもない。なぜなら私は、ご存知の通りレズなので。」


茜先輩も負けじと大きな爆弾を落とし、私の手を引いて部室を出た。


「ぎゃっ!?陸先輩!ついでにタケルも!?」

「ついでってなんやねん」


部室の外には陸先輩とタケルが立っていた。


「知ってっか?茜先輩は元ヤンだってこと。しかもえげつない方向の。」


ひえぇ、知りませんでした。でもそんな気がしています……


「菜月ちゃん」


茜先輩は、もういつもの優しい茜先輩に戻っていて


ギュッと抱きしめられた。



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