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恋花火
第28章 激アツ微熱
私は大量の洗濯カゴを手にしたまま、その場を動けずにいた。


私の得意の……いや、好きでこんな事してるわけじゃないけど、聞き耳を立てた。


「早く教えてよユリ〜」


二年のマネージャー達は、これからユリ先輩が話すであろう"面白い話"というものに期待している。


茜先輩の噂話


それってきっと、あの事なんじゃないかと思った。


「茜ってレズなんだよー」


……やっぱり。


ユリ先輩は躊躇する事なく、暴露した。


"もっと早く言えるもんなら言いたかったと思うよ。だけど言えなかったんだろ。"


タケルの言葉を思い出す。


……ずっと言えなかった事を、こんな簡単に暴露されていいのだろうか。


いや、いいはずなんかない。


ユリ先輩はやはり最低だ。


"菜月ちゃんのことが好きなの"


私は、茜先輩が精一杯頑張って告白してくれたにも関わらずあの場から逃げて


それから一言も口をきいていない。


そんな私も、最低なユリ先輩となんら変わりない


……最低だ。


けれど怖くてこの場を動けない。


すると聞こえてきた次の言葉。


「ねぇ、茜。いつからレズなの?」


…え?嘘でしょ?


まさか茜先輩はそこにいるの?


躊躇していた手が勝手に動き、手にしていた大量の洗濯物は、カゴと共に地面に散らばった。


それを横目にしてドアを開ける。


______するとそこには


馬鹿にしたような笑いを浮かべたユリ先輩と


そして______


「……菜月ちゃん。」


笑っているような


泣いているような


不思議な表情をした茜先輩がそこにいた。
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