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恋花火
第33章 All the best
「なにしてんの」


タケルがこんな時間に訪れるなんて、本当に久しぶり。


いつぶりだろう?


おじいちゃんとご飯を食べてることはあっても、私の部屋に来るなんて。


「見てわかんねー?漫画読んでる。」

「それはわかるけど……」


しかも私のベッドで。


これはマズくないですか?


「……早く帰りなよ。」

「なんで?」

「なんでって。明日試合だよ?早く寝なきゃ明日に響くよ。」


そこでピンときた。


「……もしかして緊張してねむれないの?」


そうそう、タケルは昔からプレッシャーに弱いもん。


きっとそれだ。


「ちげーし。」

「強がんなくてもいいよー」

「だから、違うって。」


バサッ


読んでいた漫画が床に落ちた。


いつになく真剣な表情をしたタケルに


背筋がのびる。


「なに…、マジな顔して。」

「…おまえこそ遅いじゃん。いつもこんなおせーの?」

「今日はたまたまだよ。」

「陸先輩?」

「まぁ、うん。」


するとタケルは落ちた漫画を拾ってベッドに置くと


「こっち来て」


……って言った。


こっちってベッドのこと?いくらなんでもそれは……


ベッドの側で立ち尽くし迷っていると、腕を掴まれた。


「……ダメ?」

「え……ダメっていうか……」

「陸先輩はダメって言わないんだろ」

「そういうことじゃなくて……」


その瞬間


抱きしめられた。


「ちょっと……タケル?」


どうしよう


ふりほどけない


いつもだったら、「やめて変態!」とか茶化しながら離れるのに


今日のタケルはなんだかいつもと様子が違うから


ふりほどけない……


「……ごめん。」


頭の上から声がする。


「ごめんって思うんだったら……」

「うん、そうだよな。」


だけど解放してくれない、その腕の中で


「……14歳の時、俺、彼女いたじゃん。」

「え?うん。亜美だよね。」

「そう。」


何が言いたいのか全くわからないけど


私はタケルが言う次の言葉を待った。

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