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恋花火
第1章 潮香る街で
私とタケルの家は、海のすぐ近くにある。


お互いの家も徒歩三分圏内というとても近距離。


なので、保育園も一緒だし、小学校も中学校も一緒。


クラスこそ違うものの、もちろん高校も一緒だ。


「菜月〜、帰ろ。」


「うん。」


仲良く登下校するのも、もう今年で10年目になる。


タケルは小学校の頃からサッカー部に所属していた。


なので身体つきはそこそこいいし、健康的に日にも焼けている。


私はというと、タケルの頼みもあって、高校に入ってからはサッカー部のマネージャーになった。


なので、登下校も、部活中もタケルと一緒。


それだけでもうおなかいっぱいという感じなのに、私たちは帰ってからもお互いの家を行き来している。


それも、ほぼ毎日。


「あらぁ、なっちゃんいらっしゃい。」


「えへへ、こんばんは。」


タケルのお母さんはとても優しい。


昔から知ってるので、まるで本当のお母さんみたいだ。


「ねぇ、なっちゃん。タケルのことよろしくね。」


そう言うのはお母さんの口癖。


よろしく、とは、タケルの恋人事情のこと。


「この間連れて来た子なんか本当に最悪!あ、なっちゃんこれどうぞ。桃ゼリー作ってみたの。お部屋に持って行って♪」


「ありがとうございますぅ」


そんなお母さんをすり抜けて部屋に到着。


「まじうっせぇあのババア。」


「タケルのこと心配してんだって。」


「あいつ、おまえ以外の女嫌いだからな 笑」


タケルはしょっちゅう女の子を家に連れ込むらしい。


だから、心配なんだと思う。


「そろそろ合宿だな。」


「だねー」


私たちは昔から一緒の幼なじみ。


とても仲の良い、幼なじみ。


ただ、ひとつだけ


クラスメイトにも、部活仲間にも、


タケルのお母さんにも


言えないことがある______







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