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恋花火
第33章 All the best
私は思い出していた


あの日のタケルのことを


「それで、仲良くやってるならいいんだけども。その恋人はどうも酒癖が悪いらしい。」

「……どんな風に?」

「タケルのお母さんを怒鳴ったり……あとは、タケルの物とか、家の物を勝手に処分したりするって。」


…なにそれ


どういうこと?


「なんでおじいちゃんそんな詳しく知ってんの?」

「ほら、つい最近タケルがここに来ただろう。」


その時にタケルが話してくれたと


おじいちゃんが言った。


______ちょっと待って


私は記憶を辿る。


あの日


タケルがここに来たあの日


タケルは、様子がおかしかった。






"抱かせてよ"


どうして気付いてあげられなかったの




私たちが抱き合う時は


緊張を和らげるとき


集中を高めるとき


そして


悲しくて、辛くて


どうしようもないとき______








14歳


私がバカなことをしたとき


タケルは抱いてくれた。


そして


お父さんとお母さんがいなくて


寂しかったお正月も、お盆も


必ずそばにいて


寂しいと思うその間もないくらい


抱きしめてくれて








私たちのSEXは快感だけじゃない


それは癒しだったり


もしかしたら、傷の舐め合いだったのかもしれない


けれども特別なその行為で


タケルに何度も救われていたのに






「……タケルっ!」


急いでタケルの家に向かい、いつものようにタケルの部屋の窓を叩く。


普段はついてる意味あるの?ってくらい常に開け放たれているカーテンが、今日は閉められていた。


しばらくして開けられたカーテンから覗くその光景を見て


私たちはもう、お互いに交わる事はないんだと思い知った。


______いや、交わってはいけないのだ、と。





「…なに?」


二川原さんが、タケルの部屋にいたから______


それも、ベッドの上に。


いかにも今までしてました


2人からは、そんな空気が醸し出されていた。



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