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恋花火
第33章 All the best
初戦白星


それは私たちにとって、頼もしい第一歩となった。


その日は勝利の興奮が醒めず、なかなか寝付けなかった。


______タケルは、あの子からの差し入れを受け取ったのだろうか。



あくまでもついでに、そんな事も考えた。


そして二回戦、三回戦と勝利して、無事県予選通過。


次は本大会に挑むこととなる。


鬼練の効果てきめん、選手達ももちろん、部員全員のスタミナは切れることがなかった。


すべての試合の観客席には、二川原さんの姿があった。







「あらーなっちゃん!」


県予選通過を決めた夜、プチお祝いとして美波とカラオケで打ち上げをした帰りに、駅で会ったのはタケルのお母さん。


「こんばんは。お久しぶりです。」


そんな私に、堅苦しい挨拶はいいのよ〜って、バシバシ肩を叩かれた。


「なっちゃん……あのね。タケルなんか言ってた?」

「え?」


いきなりの質問。思い当たる節が全くない。そんな私にお母さんは、いいのいいの気にしないで〜と、作り笑いをして見せた。


「えっと…、今日も試合だったのよね?どうだった?見に行きたかったんだけど、タケルが来てほしくないと思ったから……」

「そんな事ないと思いますけど…」

「もう……ね。しばらくタケルとは口も聞いてないから……」


お母さんは言葉を濁したので、深くは聞かなかったというか、聞けなかった。


タケルはスタメンだとお母さんに伝えると、すごく喜んでいて


今度の試合では、写真を撮れたら撮って、タケルのお母さんに見せてあげようと思った。










「タケルんち、今大変らしいぞ。」


夜、タイムリーな話題をおじいちゃんがしてきた。


「大変?」

「タケルから聞いてないか?」


タケルのお母さんも、おじいちゃんも、同じようなことを言ってくる。


周囲がそう認識するほど、私とタケルは近い関係だったのだと実感する。


「タケルのお母さんの恋人が今一緒に住んでるらしい。」

「え……」

「まぁ、お母さんの気持ちもわかるよな。ずっと女手ひとつでやってきて、キツイ所もあったんだろ。」


それはわかるよ


でも


タケルは?


タケルの居場所は


______ちゃんとあるの?
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