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恋花火
第39章 BAD BOY×××
病室から出る直前


少しだけ出た涙を手で拭っておいて良かったと思った。


「試合見てた?」

「あっ、見てましたよ!優勝おめでとうございます!」

「ありがとう。…タケルの顔見てこっかな〜」

「今!たった今!診察のために出て行きました!」


私は上手く嘘をつけているのだろうか。


……きっと大丈夫だ。


だって、陸先輩がいつものように、優しく微笑んでいるから。


「年明けからは全国が始まりますね。」

「うん。あと一ヶ月以上あるな。」

「あっという間ですよ、きっと。」


何事もなかったかのように振る舞う。


私も二川原さんと大差ない


嘘つきな女。


病院を出て空を見上げると、どんよりと暗い雲に覆われていた。


まるで今の私の心のようだ。


さっきまでは太陽が出ていたのに……


「わ、降ってきた!」


家に帰っている途中に降り出した雨は、あっという間に私たちを濡らした。


……どちらから誘った訳ではないけれど、私たちは俗にラブホテルと呼ばれる建物に身を寄せた。


冷たい雨が降っていたし


今日はおめでたい日だし


こうなるのは、自然なことだと思う。


シャワーを浴び身体を暖めてから、私たちは口づけを交わした。


……優しくて甘い、陸先輩の唇。


繊細に動く指先が、私の肌の上を滑る。
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