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恋花火
第39章 BAD BOY×××
それから二週間後


タケルが無事に退院したことを、人伝いに聞いた。


「なっちゃん!」


学校帰り、家の近くでタケルのお母さんに話しかけられた。


別にタケルのお母さんにはなんの罪もないんだけど、上手く笑顔が作れない。


「最近なっちゃん全然遊びに来てくれないのねぇ。」

「そうですねぇ……」

「あ、でも。なっちゃんのおじいちゃんから聞いたわよー?彼氏いるんですって?」


おじいちゃん…おしゃべり。


だったらしょうがないねと、タケルのお母さんは呟いた。


「あの……タケル、どうしてますか?」


あれから私は、タケルに一度も会っていない。


会いたくない会いたくないと念じていたせいか、近所で偶然遭遇するということもなかった。


「毎日リハビリに通ってるよ。」

「そっかぁ…」

「明日からは学校にも行くみたい。」


げげ……


明日からは嫌でも顔を合わすことになりそう……。


気分が重くなったところで


「あ、噂をすれば。」


お母さんの声に顔をあげると、今一番会いたくないナンバーワンのタケルが帰宅。


「こ、こんばんは……」


一応声をかけた。するとタケルは何も答えず通り過ぎた。


はぁ?


こっちが無視したいくらいなのに、タケルのお母さんの手前声かけたのに!タケルが無視するってどういうことよ!


「なんっなのあの態度!」


はっ!


タケルのお母さんがいるのに思わず出てしまったセリフ。


やらかしたーと思っていたら、タケルのお母さんは楽しそうに笑った。


「いいわー。やっぱりタケルになんでも言えるのはなっちゃんだけね。」

「え……、全然ですよ。」

「私はね…、もうダメ。タケルの信頼も全て失っちゃったから……。」



そこで思い出したのは、おじいちゃんから聞いた"タケルのお母さんの恋人"の話だった。


「タケルね、出て行くと思う。」

「へ…?」

「この家を出て行くって聞かないの。…そう言わせてしまったのは、母親である私のせいなんだけどね。どう取り繕っても、失った信用はもう、戻ってこない。」


目の前が真っ白になった。


今すぐ、タケルに直接話を聞きたい。


だけど


"もう他人"


私たちはもう……


「……寂しくなるね。」


私の言葉に、タケルのお母さんは悲しそうに相槌を打った。
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