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恋花火
第42章 ナミダボシ
最低。


陸先輩がいるのに、タケルの事を考えていたら涙が出るなんて。



……こんな私は、陸先輩と一緒にいる資格なんてない。





「陸先輩……私、もう陸先輩とは…は」

「離れるとか無しだからね?」

「へ?」

「……想定内だよ。」


陸先輩がボソッと呟いた。



「……初めて菜月ちゃんを見た時から、既に隣にタケルがいたから。簡単に忘れられるなんて、はなっから思ってません。」



陸先輩が私を初めて見たのは、中学まで遡るらしい。


「俺が三年の時の中体連で、菜月ちゃん達の中学とぶつかったんだよ。」

「そうだったんですか!?」

「そうなんですよ。俺の中学でもタケルは有名だったんだ。すげぇ足の速い奴がいる、ってね。だから試合が楽しみでさ。」


陸先輩はその時を思い出しているのか、懐かしそうに遠くを眺めていた。


「だけど勝ったのは俺たちだった。」

「……思い出しました。」


あの時


タケルは部内で揉めていた。


レギュラーを取れなかった先輩に嫌がらせを受けていた時期。


「おまえの敵は誰?ってくらい、タケルはやられてたね。」

「……そうですね。」


チームメイトが敵だった、あの頃。


パスだってもらえなくて


アシストなんか誰もしてくれなくて


「……その試合のあと、初めて、菜月ちゃんを知った。」


陸先輩に言われるまで、私はその時のことをまるで思い出すこともなかった。


けれど今、鮮明に思い出す。
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