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恋花火
第42章 ナミダボシ
唇がそっと離れると、僅かに出来た隙間に風が吹いて


陸先輩の潤んだ瞳と目が合った。



「……前だったら、言えたと思うんだよね。菜月ちゃんが決めたことなら仕方ないって。」

「陸先輩……」

「だけど今は言えない。どうしても言えない……」


私を求める熱さが、唇から伝わってくる。


「……私、すごくズルい。最低。」

「俺なんかもっとズルいし最低だよ。」

「どこがですか?」

「菜月ちゃんが弱ってるとこにつけ込むの俺の特技。嫌な特技だな。笑」


陸先輩はフッと笑って、私の頬を撫でる。


「……ごめんね、背中押してあげられなくて。」

「……いえ。」

「タケルがいなくなって、チャンスとか思っちゃってんだよ?俺は。……本当最低だよ。」



いつも穏やかな陸先輩の、初めて聞いた本音。


だけどこうやって包み隠さず気持ちを話してくれる陸先輩は、最低なんかじゃないから、絶対。


言葉とは裏腹に優しく触れるその手に


自然と涙がこぼれる。




「……菜月ちゃん?」

「ごめんなさい……」

「えっ、な、なにが?」

「やっぱり陸先輩のことも好き。どうしよう。」

「お、好き?やったー」




深刻な私に反して、おちゃらけてみせる陸先輩。


空気を重くしないように


わざとそうしてくれてるってこと


わかってるよ


本当に優しいね……



「……菜月ちゃんがそろそろ言い出すだろうなーってのは予想してたし。大丈夫。」

「えっ、そこまでわかっちゃうんですか!?」

「まーね。菜月ちゃんとエッチしてればわかる。笑」

「ひぇー」



ぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。


タケルの事も好き


……かもしれない。


だけど陸先輩の事も……


あーーー!!!


わけわからんー!!!






見上げた空は冬空


こんがらがっちゃってる私をよそに


冬の星座たちがすまし顔で輝いていた。


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