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恋花火
第46章 繋いだ手
ホームで電車を待つ。


朝のラッシュがとっくに過ぎ去ったこの時間は、いつもは人でごった返すホームも人がまばらだ。


ビュッと吹く風が、頬を冷たく撫でた。


電車に乗り込むと今はラッシュ時じゃないので、わざわざ壁際に立つ必要もない。


久しぶりに座席に腰を下ろした。


タケルは私が座った席のすぐ横に立ったまま、携帯を触っている。


「……座らないの?」


私の問いかけにタケルは答えず、顔を上げ窓の外に目をやった。


「座ったら海見えないし。」


しばらくして聞こえてきたタケルの声。


あまりに時間が空いたので、何のことか一瞬わからなかった。


タケルは窓の外を見ていた。


キラキラ水面が光る海を。





学校の最寄駅に着いた。


なのにタケルは降りる気配がない。


「降りないの?」

「うん。」

「え……なんで?」


また、少しの間をおいて


タケルは答えた。


「海見てたら、学校行く気しなくなった。部活には行くから。」


電車のドアの開閉を知らせるアナウンスが鳴り、ドアが閉まった。


学校の最寄り駅から先の、この電車の行き先はどこかわからないが、電車は再び発車した。


「……なにしてんの?」

「降り忘れた……どうしよう。」


タケルにつられ、つい降り忘れた電車に揺られながら


私はどこへ行くのだろう。


「あっち座るか。」

「うん。」


私の少し前を歩くタケルの背中


それを見ていたら、


なぜだか目頭が熱くなるのを感じた。
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