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恋花火
第52章 the one
陸先輩が教えてくれたのは、キャプテンを任された当時のこと。


ゴリラみたいだった前代のキャプテンと違い、優しい雰囲気の陸先輩の言うことは、当初誰も聞かなかったらしい。


後片づけもせずに帰ってしまうみんな。ミーティングに大遅刻は当たり前。


だけどその全てにマメに従ったのは、タケルだけだった、と。


「……そういえばタケル部活に走って行ってたような…」

「でしょ?」

「……今はサボりまくってますけどね……一か月も。」

「だな。笑」


あとは、茜先輩との話。


茜先輩が私狙いだと知って、自らを犠牲にしてまで手を出させなかったとかなんとか……


「菜月ちゃんの唇は結局俺と茜に奪われたけどね。」


陸先輩、笑ってる場合ですよ。心の中で突っ込んでみる。笑


「……知ってる?実はタケルってモテるんだよ?」

「ええ!ありえないありえない!」

「あいつサッカーうまいからね。試合のたびに他校の女子来てたじゃん。」

「ひぇー」

「差し入れは全てお断り。菜月ちゃんのやつじゃないと食べたくないんだってさ 笑」


……もう、なんなの、それ。


「……よく、他のお家のご飯食べられない人いますもんね。タケルってそれなのかな……」

「……はい?」

「おにぎりとか。お母さんの握ったおにぎりしか食べられない的な?」


タケルってそんなに繊細だったのか。


……可愛いなぁ。


会いたいなぁ……。


「会えるよ、きっと。」


根拠がないけど絶対会える、そう陸先輩は言ってきた。


「全く会える気がしないです……」

「本当に運命の相手なら、何度すれ違ったってまたひとつになれるよ。」


陸先輩は、そんな素敵な言葉を送ってくれた。



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