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恋花火
第11章 HERO
「もう大丈夫だよ。」


そこに立っていたのは、サッカー部のキャプテンの陸先輩だった。


助けてくれた瞬間 次の停車駅に着いてしまい 痴漢の犯人は人混みに紛れ見失ってしまった。


けれど、犯人を捕まえるよりも、何よりも先に、安心させるように声をかけてくれたことが嬉しかった。


「陸先輩、同じ電車だったんですね……」

「そうだよ。実はずっと一緒の電車だったんだけど……」


知らなかった。


私は今までどれだけ周りを見ていなかったのだろう。


「まぁ、あいつ背が高いし、あれだけガードされてちゃ周りは見えなかっただろうね。」


陸先輩は笑いながらそう言った。


あいつ、とはタケルのこと。


私が痴漢に遭って以来、タケルは私を守るように寄り添ってくれていたから……。


「もう、タケルとは一緒に登下校してないんです。もう一人で乗れるようにならなくちゃ。私もいつまでも子どもではないので……」


へへっと笑って見せるが、陸先輩は笑っていなかった。


それどころか眉間にしわを寄せ、真剣な表情をしている。


「……そっか。」


陸先輩は深く聞いてはこなかった。


よく考えたら、陸先輩の元彼女とタケルは今付き合っている。


私と陸先輩はもしかして同じ立場なのではないか。


私は思い切って聞いてみた。


______知りたかった。



私と同じ立場の、陸先輩の気持ちを。


私のように嫉妬で支配され、ドロドロなのか……



知りたかった。
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