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恋花火
第11章 HERO
「……茜先輩をタケルに盗られて、悔しくないんですか?」


デリカシーがない質問だと自分でも思った。


先日ユリ先輩に言われた言葉を、そっくりそのまま陸先輩に言ってしまったのだから。


ユリ先輩に言われた時、私の心の中は嫌な気持ちでいっぱいだった。


けれど、陸先輩は穏やかな顔で言った。


「……やっぱりみんな勘違いしてる。俺と茜は付き合ってないよ。」

「へ?」


予想外の返答に、思わず間抜けな声が出てしまった。


「親友って言った方がいいのかな。まあ、そんな感じ。茜はずっと好きな奴いるしね。」


そうだったんだ…てっきり二人は恋人だと思っていた。


ずっと好きな奴って


それってもしかしてタケルのことなのかな……


そこは聞けなかったし、陸先輩も言わなかった。


「菜月ちゃんこそ……無理してるんじゃないの」


その質問には、イエスと答えればいいのか、ノーと答えればいいのか。


迷っていたら、「ごめん、ごめん」そう言って陸先輩が笑い出した。


「…?なんで笑ってるんでしょうか…」

「や、菜月ちゃん顔に出るから、言わなくてもわかるわ」


そう言って笑っていた。


…もう、人の顔見て笑うなんて失礼だなぁ。


だけど部活中はいつもストイックな陸先輩の笑顔は、意外にもとても可愛らしいものだった。


タケルとはまた違った、大人の男という雰囲気は、その笑顔をより引き立てている。


そういえば陸先輩に助けてもらうのはこれで二度目だと思った。


ユリ先輩に絡まれた時も、ナイスタイミングで現れたことを思い出した。


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