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Complex
第4章 新天地
綾瀬は気をきかせてか、友香に迫ってくることはなかった。
何か見ようか、とブルーレイやDVDが並んだ棚を開けている。
「どんなのが、苦手?」
「んー、ホラーは無理です。アクションとかも、あんまり見ないかな」
その言葉にしばらく綾瀬は考え込むと、一枚の古いDVDを手に取った。
「じゃあ恋愛ものとか?」
そう言って綾瀬が選んだ映画は友香の全く聞いたこともないタイトルのものだった。
気がつけば、隣の綾瀬の存在も忘れて映画に集中していた。
刑務所に入った夫を待ちながら、あるお屋敷でメイドとして働く女性。
主人公の彼女も、彼女に想いを寄せるお屋敷の主人も、脇役でさえも。
ほとんど会話がない。
あるのは、音楽。
その音楽に合わせるように映る景色。
彼女の願いを聞き、そのためにどんどんと減っていく高価であっただろう調度品や家具。
そして、ピアノ。
それだけの話なのに、とても切ないのはなんでだろう。
エンドロールが流れる頃、友香は自然と涙が溢れていた。
苦笑しながら綾瀬がティッシュを渡す。
今日は、涙もろい日だ。
何か見ようか、とブルーレイやDVDが並んだ棚を開けている。
「どんなのが、苦手?」
「んー、ホラーは無理です。アクションとかも、あんまり見ないかな」
その言葉にしばらく綾瀬は考え込むと、一枚の古いDVDを手に取った。
「じゃあ恋愛ものとか?」
そう言って綾瀬が選んだ映画は友香の全く聞いたこともないタイトルのものだった。
気がつけば、隣の綾瀬の存在も忘れて映画に集中していた。
刑務所に入った夫を待ちながら、あるお屋敷でメイドとして働く女性。
主人公の彼女も、彼女に想いを寄せるお屋敷の主人も、脇役でさえも。
ほとんど会話がない。
あるのは、音楽。
その音楽に合わせるように映る景色。
彼女の願いを聞き、そのためにどんどんと減っていく高価であっただろう調度品や家具。
そして、ピアノ。
それだけの話なのに、とても切ないのはなんでだろう。
エンドロールが流れる頃、友香は自然と涙が溢れていた。
苦笑しながら綾瀬がティッシュを渡す。
今日は、涙もろい日だ。