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Complex
第5章 居所
「私、思ってたんです。一人でも生きていけるって」
値段の割りに雑な味の紅茶を口に運びながら友香は言う。
「一人でなんでもできるし、仕事も結果残して、いいお給料もらって。でも、一ヶ月お休みもらってみたら、実は何もないことに気がついてしまったんです。遊んでくれる友人も、趣味もない。せっかくの休みに出かけたいところもなかった。仕事がなければ私は空っぽだったんです」
綾瀬は黙ったまま、コーヒーにも手をつけずに友香の話を聞く。
「昨日みたいに取り乱したことも、何年もなかった。泣いたら負けって思ってましたし。けどこの一ヶ月でジムの人と出会い、綾瀬さんと出会ったおかげで、また泣けるようになりました」
こんなことを話すつもりはなかったのに、綾瀬と向かい合った途端にどんどんと言葉が溢れてくる。
きっと、私は誰かに聞いて欲しかったのだ。
私の心にずっと隠れていた、この気持ちを。
「昨日は、高校の時の友人に会ってたんです」
これこそ言わなくてもいいこと。
でも、私がどんな人間かを綾瀬には話しておきたい。
値段の割りに雑な味の紅茶を口に運びながら友香は言う。
「一人でなんでもできるし、仕事も結果残して、いいお給料もらって。でも、一ヶ月お休みもらってみたら、実は何もないことに気がついてしまったんです。遊んでくれる友人も、趣味もない。せっかくの休みに出かけたいところもなかった。仕事がなければ私は空っぽだったんです」
綾瀬は黙ったまま、コーヒーにも手をつけずに友香の話を聞く。
「昨日みたいに取り乱したことも、何年もなかった。泣いたら負けって思ってましたし。けどこの一ヶ月でジムの人と出会い、綾瀬さんと出会ったおかげで、また泣けるようになりました」
こんなことを話すつもりはなかったのに、綾瀬と向かい合った途端にどんどんと言葉が溢れてくる。
きっと、私は誰かに聞いて欲しかったのだ。
私の心にずっと隠れていた、この気持ちを。
「昨日は、高校の時の友人に会ってたんです」
これこそ言わなくてもいいこと。
でも、私がどんな人間かを綾瀬には話しておきたい。