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Complex
第4章 新天地
新店舗に到着すると、営業部長がすでに到着していた。
部長になっても、誰よりも熱意があるこの男は、裏口の前でゆっくりとタバコを吹かしていた。

「部長、おはようございます」
「ああ、小林さん。久しぶりだねー。おはよう」

入り口の横に据えられた灰皿でタバコの火をもみ消すと、友香に向かい合った。

「へぇ、見違えたね。いい休みだった?昔を思い出すよ」

友香はその言葉に微笑む。

入社当時、この部長は友香の配属された店舗の支店長だった。
仕事の全てを教えてくれた恩人だ。
自らが部長に昇格するときに、後釜として次の支店長に友香を推挙してくれたのも、この人だ。

「長い間休みいただきまして、ありがとうございました。ご迷惑おかけしてすいません」
「はは、充実したみたいで良かったよ」

眺めるように友香の全身を見る部長は、嬉しそうに笑ってくれる。


部長に鍵を開けてもらい中に入ると、殺風景な光景が広がっていた。
休憩室にでもなるのだろう、入ってすぐのスペースは思っていたよりも広い。
今は長机と何脚かのパイプ椅子が置かれているが、それもあと一週間だろう。
机の上には、膨大なファイルと書類、そして近隣の地図が無造作に置かれている。
昨日まで、誰かがここで仕事をしていたのだろうか。

そこから奥に、お客様の来店する事務所。

カウンターはそれぞれが広く作られている。
まだ事務机も何もない。
これから一週間と少しで、ここを作り上げていくのだ。

新築特有の乾いた香りを感じながら、新しい戦地に心が躍る。
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