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Complex
第4章 新天地
「店長ー、飲まないんですかー?」
ビール瓶を片手にどかり、と隣に座り込んだのはこの中にいる社員の中で誰よりも天性の個性を持っている平岩だった。
友香と同い年の彼は、そつなく仕事をこなすかと思いきや、お客様の前になると途端にその冷静な顔を崩す。
今、彼は赤らめた顔を同じように友香に向けていた。
「この後、行かないといけないところがあるの」
そう言って彼から瓶ビールを奪うと、近くにあったグラスに注ぐ。
「はい、私の分は平岩さんが飲んでね」
「あ〜、もーっ」
平岩は言葉とは裏腹に、そのグラスを受け取る。
初めてこのメンバーで行う懇親会兼打ち上げ。
明日は休みということもあり、普段は車通勤の者も飲むのを覚悟で電車で来ている者も少なくない。
アルコールの入っていないグラスを持っているのは友香のみだ。
宴もたけなわ。
所々で思い思いに飲み交わしている。
気がつけばこのテーブルには平岩と二人きりだ。
「それ、男です?」
何か言いたげなその視線を曖昧に交わした。
「でも、びっくりですよ」
「何が?」
平岩はグラスを空けると、催促するようにそれを友香の目の前に置いた。
「かねがね聞いていた、やり手の最年少女支社長。どんな堅物が来るのかってみんなで噂してたんですよ」
「それは、よくない意味ね?」
「はは、最初はね、女を捨てて仕事に生きてる女性を想像してたんです」
友香がさらに継いだビールを空けながら平岩は答える。
「でも、なんていうか、会ってみたら女特有のいやらしさもないし、お客にも柔らかいし」
「何、それ?」
「ほら、あるじゃないですか、女って、表ではニコニコしながら影では黒い一面持ってたり。特に数字第一主義のこの業界だとそうなるか、もしくは諦めてのらりくらりとする子しか残らないでしょ?」
そう言って平岩はチラリと事務で入った彼女を見る。
彼女は達観している。
仕事は仕事。
その仕事振りは目を見張るものだし、本来なら業務に入っていない接客も、忙しい時期だから仕方がないとカウンターに来てくれる。
けれど定時になればお客様がいようと構わずにタイムカードを手に取る。
友香が誰よりも嬉しく思う仲間だ。
ビール瓶を片手にどかり、と隣に座り込んだのはこの中にいる社員の中で誰よりも天性の個性を持っている平岩だった。
友香と同い年の彼は、そつなく仕事をこなすかと思いきや、お客様の前になると途端にその冷静な顔を崩す。
今、彼は赤らめた顔を同じように友香に向けていた。
「この後、行かないといけないところがあるの」
そう言って彼から瓶ビールを奪うと、近くにあったグラスに注ぐ。
「はい、私の分は平岩さんが飲んでね」
「あ〜、もーっ」
平岩は言葉とは裏腹に、そのグラスを受け取る。
初めてこのメンバーで行う懇親会兼打ち上げ。
明日は休みということもあり、普段は車通勤の者も飲むのを覚悟で電車で来ている者も少なくない。
アルコールの入っていないグラスを持っているのは友香のみだ。
宴もたけなわ。
所々で思い思いに飲み交わしている。
気がつけばこのテーブルには平岩と二人きりだ。
「それ、男です?」
何か言いたげなその視線を曖昧に交わした。
「でも、びっくりですよ」
「何が?」
平岩はグラスを空けると、催促するようにそれを友香の目の前に置いた。
「かねがね聞いていた、やり手の最年少女支社長。どんな堅物が来るのかってみんなで噂してたんですよ」
「それは、よくない意味ね?」
「はは、最初はね、女を捨てて仕事に生きてる女性を想像してたんです」
友香がさらに継いだビールを空けながら平岩は答える。
「でも、なんていうか、会ってみたら女特有のいやらしさもないし、お客にも柔らかいし」
「何、それ?」
「ほら、あるじゃないですか、女って、表ではニコニコしながら影では黒い一面持ってたり。特に数字第一主義のこの業界だとそうなるか、もしくは諦めてのらりくらりとする子しか残らないでしょ?」
そう言って平岩はチラリと事務で入った彼女を見る。
彼女は達観している。
仕事は仕事。
その仕事振りは目を見張るものだし、本来なら業務に入っていない接客も、忙しい時期だから仕方がないとカウンターに来てくれる。
けれど定時になればお客様がいようと構わずにタイムカードを手に取る。
友香が誰よりも嬉しく思う仲間だ。