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Complex
第4章 新天地
「気になるの?」
「いや、そうじゃなくて」

なるほど。
確かに彼女のそのクールでいながらも視野の広いところは平岩が好みそうだ。
友香はなんとなく、久々に出会う男女の物語を嬉しく思う。

「俺の話じゃなくて。店長ですよ。みんな言ってますよ。浮いた話があるのか気になるって」
「なんで、そんな話になるの?てか、私の知らない間にみんなそんな話してるの?」

友香は思ってもいなかった会話に不思議な感覚を覚える。

「だってみんな言ってますよ。仕事もバリバリで。でも女子力高くて。ほんとは俺もね、異動の話持ちかけられた時に店長の座を奪うチャンスだって乗り込んだんですよ。でも、敵わないなぁ〜」

彼は、何を言っているのだろう。
仕事が終われば毎日缶ビール片手にテレビに独り言を呟いていた私の、どこが女子力が高いのか。

「平岩さん、酔ってる?」
「酔ってないですよ。でもこの数日で、店長に追いつくにはまだまだって実感したのが、悔しいんです」

なぜ、それを言うんだろう。
酔った平岩の口は止まらない。

「俺が店長だったら、平社員と一緒になってポステイングなんて絶対しないし、椅子に座ってタバコ吸ってますよ。客だって上客は社員に回さずに自分で取りに行きますよ。なのに店長はそれをやる。見た目は若いし男がほっとかないタイプだし、なのに独身だし。わけがわからんっ!」
「私のどこを見てそんな発想になるの?女子力なんてないない」

なぜそんな話になるのか。
ここ数年言われてもいなかった言葉たち。
ずっと、知らぬ間に欲していたその言葉は、友香の心を震わせる。
動揺を見せないように友香は目の前にあるウーロン茶を飲み干した。

知らない間に、何かが変わってきている。
この一カ月の休養で、少しは女を取り戻せたのだろうか。
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