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Complex
第4章 新天地
圭太は、変わらない。
変わったのは、友香だ。

何を言われてもその手にはウーロン茶。
お酒を飲んでしまったら帰れなくなる。
そうなったら、また前のように上の空で圭太と朝を迎えてしまいそうだから。

「でも、ほんと一カ月で変わるもんだね。仕事復帰してからリバウンドとかしてないの?」
「してないよ。家でお酒も飲まないし、もったいないからちゃんと
食事にも気をつけてる。あんまり体動かしてないんだけどね」

眺めるような視線を受けながら友香は微笑んだ。

一カ月の集中トレーニングのおかげである程度の脂肪は落ちた。
けど、まだまだ全然目標には届かない。
今の職場は、アルコールに逃げようと思うほどのストレスもないおかげで、その努力を維持し続けていた。


圭太はメールのことには触れない。
だから友香も触れることはない。
ほんとは、今のこのずるずるの関係を誰かに叱って欲しいのだけれども。
誰かに言うのはとても気後れしてしまう関係。
だから、何も言わないでくれる今の空気の方がありがたい。


もう随分待っていたのだろうか。
数十分もすると、圭太の様子が違う。
明らかに酔っているのに、帰ろうとしない。


結局、今日はなんだったんだろう。
メールのことも話さない。
圭太の真意もわからない。
ただ少しの会話をしただけで、もうこの場は終わりだ。

これもしかたのないこと。
これが友香の望んだ関係なのだ。

平岩の言葉を思い出す。
彼の想像する友香とは真逆の自分。
でも、ここから動く方法がわからない。


友香は圭太の重い体を支えながら車に戻った。
今日は、これでお開きだ。

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