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Complex
第4章 新天地
「…ごめん」

友香の涙に、やっと自分を取り戻した圭太は助手席に退いた。
圭太が何か言おうとしたけれど、友香は無言でそれを遮る。

友香は衣服を整え、涙を拭うと、なんとか圭太に向かい合った。

「ごめん、圭太。タクシーで帰って」

これが、精一杯。
気丈に振る舞っても指先は小さく震えるのを隠せない。

「お願いだから、降りて」

圭太は何も言わずに車を降りると振り返ることもせず歩き出した。


友香はハンドルに突っ伏しながら、声を出して泣いた。


怖かった。
襲われそうになったことでも、力ではとうてい敵わない男の存在を知ったことでもなく。

圭太を、そうさせてしまったことが、何よりも恐ろしかった。

つい数時間前の女として扱ってくれた平岩の言葉が蘇る。
あの空気が懐かしい。

これが、今までの自分への罰だ。



友香は、その場から動くことができなかった。
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