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Complex
第4章 新天地
「っしゃいませー」
友香が扉を開けると、前と変わらない張りのある声が響く。
閉店も間際なのだろう、以前に比べて客はまばらなのに、それでも手を抜かない。
綾瀬は以前と同じ席を友香に勧めると、カウンターの中に戻った。
「ビールでも、飲む?」
少し考えて首を振る友香を黙って綾瀬は見つめた。
今、飲んでしまったら。
せっかく直した化粧がまた崩れてしまうだろう。
言わないでいいことも、本当に言いたいことも。
何もかもが溢れ出してしまうかもしれない。
綾瀬はそんな友香を気にとめる風もなく、それでも湯のみに入った暖かい緑茶を友香の前に差し出した。
「熱いから、気をつけて」
「…ごめんなさい」
「ん?何か謝ることしたの?」
つい口に出た言葉は、感謝ではなく謝罪だった。
とっさのことで、何に対して謝ったのか、誰に対しての言葉なのか、友香も頭の中で考えてしまう。
暖かい緑茶が喉を通る。
まるで今の友香の気持ちも緑茶と共にすとんとどこかへ流れ出ていくような安心感。
これが、綾瀬に惹かれる理由なのかもしれない。
「ようやく、戻ってきたね」
友香が緑茶を飲み干す頃、綾瀬が微笑んだ。
友香が扉を開けると、前と変わらない張りのある声が響く。
閉店も間際なのだろう、以前に比べて客はまばらなのに、それでも手を抜かない。
綾瀬は以前と同じ席を友香に勧めると、カウンターの中に戻った。
「ビールでも、飲む?」
少し考えて首を振る友香を黙って綾瀬は見つめた。
今、飲んでしまったら。
せっかく直した化粧がまた崩れてしまうだろう。
言わないでいいことも、本当に言いたいことも。
何もかもが溢れ出してしまうかもしれない。
綾瀬はそんな友香を気にとめる風もなく、それでも湯のみに入った暖かい緑茶を友香の前に差し出した。
「熱いから、気をつけて」
「…ごめんなさい」
「ん?何か謝ることしたの?」
つい口に出た言葉は、感謝ではなく謝罪だった。
とっさのことで、何に対して謝ったのか、誰に対しての言葉なのか、友香も頭の中で考えてしまう。
暖かい緑茶が喉を通る。
まるで今の友香の気持ちも緑茶と共にすとんとどこかへ流れ出ていくような安心感。
これが、綾瀬に惹かれる理由なのかもしれない。
「ようやく、戻ってきたね」
友香が緑茶を飲み干す頃、綾瀬が微笑んだ。