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やさしいんだね
第2章 情熱は二種類
 松浦に抱きしめられてキスされると、小百合はこう考える。
  
 ママが男にハマり、ダメな男でも誠心誠意尽くして、もっとダメにしてしまって、結局捨てられてしまう気持ちもわかると。

 ママの男も、松浦のような男だったんだろうか。
 キスされただけで気が狂ってしまいそうなくらい愛しく感じて、触れられただけで身体の中心が疼いてしまうような、そんな男だったんだろうかと。
 松浦という名字の、私の本当のお父さんは、と。

「来月26日、空いてる?」

 スーツとセーラー服に着替えてしまったあとで、松浦は再度キスをしながら小百合に尋ねた。

「来月?ちょっと待って」

 学生鞄からスケジュール帳を取り出し、中を確認する。
 黄色ベースの台紙に規則正しく並ぶ格子。
 ミッフィーが佇む26日の欄は空白。
 小百合は笑顔で顔を上げた。

「空いてるよ。生理も被らないから絶対大丈夫」
「そうか。じゃあその日はまた頼むよ」
「本当?嬉しい!ちゃんと空けておくけど、ソンにも電話しといてくれる?直接やり取りしたって勘違いされたらお兄さんに迷惑が掛かるから」
「ハハ、わかってるよ。小百合ちゃんってしっかりしてるね、ホント」
「そんなこと・・・ねぇ、26日何かあるの?」
「え?」
「だって、こんなに早く予約してくれるなんて初めてだから」
「ああ」

 松浦はベッドサイドに置いたままだった黒縁のセルフレームのメガネをかけながら、少し照れた様子で言った。

「俺、その日誕生日なんだ」
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