この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
やさしいんだね
第3章 教師はなにも
そんな街の公立中学校だから、勤務する教師もまた、公立中学に通うしかなかった生徒と同様に、何か問題のある人間なのかも知れない。
そう感じたのは、この学校に転校の挨拶に訪れ、初めて新しい担任教師に面会した時と。
そして。
「俺はね。学生時代友達が1人も居なかったんだ。正確には部活の仲間は居たけれど、それは同じ目標を共有する仲間だからというハッキリした目的意識があって肩を並べていたということで、ただ弁当の時間に1人でいるのが寂しいから誰か適当なクラスメイトと一緒に弁当を食べたい、だから友達が欲しい、などと思ったことがなかったんだ。だって自分自身が自分自身を独り占め出来る時間ってそうないだろ。考えることや想像することが多すぎるんだから、青春という日々には。友達とつるんでいれば1人で弁当を食うことは無くなるけれど、同時に自由に思考を巡らせる暇もなくなるということだ。そんなの考えられなかったし御免だと思った。要するに俺は孤独を楽しんでいたんだ。だから中学時代に俺がいつも1人ぼっちでいると心配した担任が俺と毎日一緒に教室で弁当を食べるようになった時は正直腹が立ったよ。お前の価値観で俺の孤独を邪魔するなと。ところで、君が転校してきてからここ一週間、俺は君の様子を観察していた。そして、弁当の時間はもちろんのこと、現在のような休み時間にすら1人きりでいるという暫定事実を受け止めた。原因については君がクラスメイトの好意を内気な性分から素直に受け入れられない部分もあるようだし、何よりそのセーラー服が教室内でガン浮きしていてなんとなく周りが近づけないせいもある。あくまで憶測だけど。正直俺は、自分が過去に感じたウザイ教師にはなりたくない。けれども、俺のような感性の人間はマイノリティだとも理解しているから、万が一君が寂しい思いをしているならば、それは担任として改善せざるを得ない状況であることに違いはないから、だからこうして君の背後に立ち、声を掛けているんだ。君が1人ぼっちでいる気持ちについて正直なところを教えて欲しい。でなければ、俺は今日の昼休み、この教室に弁当を持参した上で君と机を並べて当たり障りのない天気とかアイドルとかドラマの話をしながら共に弁当を食わなければいけないだろうという担任としてある意味普遍的な正義感に駆られているからだ」
今、この瞬間だ。
そう感じたのは、この学校に転校の挨拶に訪れ、初めて新しい担任教師に面会した時と。
そして。
「俺はね。学生時代友達が1人も居なかったんだ。正確には部活の仲間は居たけれど、それは同じ目標を共有する仲間だからというハッキリした目的意識があって肩を並べていたということで、ただ弁当の時間に1人でいるのが寂しいから誰か適当なクラスメイトと一緒に弁当を食べたい、だから友達が欲しい、などと思ったことがなかったんだ。だって自分自身が自分自身を独り占め出来る時間ってそうないだろ。考えることや想像することが多すぎるんだから、青春という日々には。友達とつるんでいれば1人で弁当を食うことは無くなるけれど、同時に自由に思考を巡らせる暇もなくなるということだ。そんなの考えられなかったし御免だと思った。要するに俺は孤独を楽しんでいたんだ。だから中学時代に俺がいつも1人ぼっちでいると心配した担任が俺と毎日一緒に教室で弁当を食べるようになった時は正直腹が立ったよ。お前の価値観で俺の孤独を邪魔するなと。ところで、君が転校してきてからここ一週間、俺は君の様子を観察していた。そして、弁当の時間はもちろんのこと、現在のような休み時間にすら1人きりでいるという暫定事実を受け止めた。原因については君がクラスメイトの好意を内気な性分から素直に受け入れられない部分もあるようだし、何よりそのセーラー服が教室内でガン浮きしていてなんとなく周りが近づけないせいもある。あくまで憶測だけど。正直俺は、自分が過去に感じたウザイ教師にはなりたくない。けれども、俺のような感性の人間はマイノリティだとも理解しているから、万が一君が寂しい思いをしているならば、それは担任として改善せざるを得ない状況であることに違いはないから、だからこうして君の背後に立ち、声を掛けているんだ。君が1人ぼっちでいる気持ちについて正直なところを教えて欲しい。でなければ、俺は今日の昼休み、この教室に弁当を持参した上で君と机を並べて当たり障りのない天気とかアイドルとかドラマの話をしながら共に弁当を食わなければいけないだろうという担任としてある意味普遍的な正義感に駆られているからだ」
今、この瞬間だ。