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やさしいんだね
第3章 教師はなにも
小百合の背後に立っていたのは担任の八田という男であった。
彼は体育教師という職業柄、健康的な褐色の肌をしていたが、どことなく常に陰気なオーラが彼の周りを漂っており、そのせいで小百合は初対面から彼のことをいけ好かないと思っていたが、それは先ほどの発言でより確定的なものになった。
しかしそれは八田のほうも同じかもしれない、と小百合は振り向いて八田の顔を見上げた時に思った。
八田は小百合を心配している体で話しかけてきているにも関わらず、小百合が真っ直ぐに彼の鳶色の瞳を見つめても、絶対に視線を合わせようとしなかったからだ。
「私べつに一人で全然寂しくないんで、お弁当は一人で食べます」
自己紹介の時にエクアドルと日本のハーフだと語った彼のやや日本人離れした、それでいてアジア人の集団に混ざっていてもさほど違和感のない端正な顔付きにふたつついた鳶色の瞳が、小百合の言葉を受けて考えるように瞳と同じ色の長い睫毛の下に2回隠れた。
そのあとで八田は「わかった。もう2度と君には干渉しないから安心して孤独を楽しみなさい」と告げると亡霊のように教室から音もなく消えていった。
小百合は八田の言葉を彼の瞬きと同じく2回心の中で反芻したのち、手帳を大事に学生鞄の中にしまい、代わりに塾のテキストを取り出した。
教師がいけ好かないのは八田に限ったことでないと、これまた強く、胸の中で確信しながら。
彼は体育教師という職業柄、健康的な褐色の肌をしていたが、どことなく常に陰気なオーラが彼の周りを漂っており、そのせいで小百合は初対面から彼のことをいけ好かないと思っていたが、それは先ほどの発言でより確定的なものになった。
しかしそれは八田のほうも同じかもしれない、と小百合は振り向いて八田の顔を見上げた時に思った。
八田は小百合を心配している体で話しかけてきているにも関わらず、小百合が真っ直ぐに彼の鳶色の瞳を見つめても、絶対に視線を合わせようとしなかったからだ。
「私べつに一人で全然寂しくないんで、お弁当は一人で食べます」
自己紹介の時にエクアドルと日本のハーフだと語った彼のやや日本人離れした、それでいてアジア人の集団に混ざっていてもさほど違和感のない端正な顔付きにふたつついた鳶色の瞳が、小百合の言葉を受けて考えるように瞳と同じ色の長い睫毛の下に2回隠れた。
そのあとで八田は「わかった。もう2度と君には干渉しないから安心して孤独を楽しみなさい」と告げると亡霊のように教室から音もなく消えていった。
小百合は八田の言葉を彼の瞬きと同じく2回心の中で反芻したのち、手帳を大事に学生鞄の中にしまい、代わりに塾のテキストを取り出した。
教師がいけ好かないのは八田に限ったことでないと、これまた強く、胸の中で確信しながら。