この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
やさしいんだね
第4章 ロストバージン
「スカート、うしろ、血、汚れてるわよ」
手を捕まれ驚いて目をやると、女は生理用品を小百合に握らせていた。
「使って」
ハッと気付き、小百合は慌てて襞スカートを引っ張って尻の辺りを確認した。
紺色の生地でもハッキリと分かるくらい、べったりと血液が付着してしまっていた。
愕然として小百合が顔を上げたときにはもう、女は雑踏に紛れてしまったあとだった。
小百合は八田が自分にパーカーを差し出し腰に巻いて帰れと言った理由をようやく理解し、一度は階段のほうに向けた足を再びトイレへ向けた。
無意識に視線を向けた改札の雑踏のなかに、八田の後ろ姿が見えた。
いや。
正確には、振り向いて小百合の姿を確認しようとした、横顔だ。
その横顔がぐらりと歪み、ぶつりと音を立てて途切れた。
あの時とは、違う。
冷たいタイルが強い衝撃と共に小百合の頬に広がった瞬間、小百合はそう自分に言い聞かせた。
あの時とは違う。
似ているけど、違う。
だってこれは、好きな人と、望んでしたことの結果だから。
わかってたのに。
―――バカみたい。わたし。
・・・・そんなふうに。
手を捕まれ驚いて目をやると、女は生理用品を小百合に握らせていた。
「使って」
ハッと気付き、小百合は慌てて襞スカートを引っ張って尻の辺りを確認した。
紺色の生地でもハッキリと分かるくらい、べったりと血液が付着してしまっていた。
愕然として小百合が顔を上げたときにはもう、女は雑踏に紛れてしまったあとだった。
小百合は八田が自分にパーカーを差し出し腰に巻いて帰れと言った理由をようやく理解し、一度は階段のほうに向けた足を再びトイレへ向けた。
無意識に視線を向けた改札の雑踏のなかに、八田の後ろ姿が見えた。
いや。
正確には、振り向いて小百合の姿を確認しようとした、横顔だ。
その横顔がぐらりと歪み、ぶつりと音を立てて途切れた。
あの時とは、違う。
冷たいタイルが強い衝撃と共に小百合の頬に広がった瞬間、小百合はそう自分に言い聞かせた。
あの時とは違う。
似ているけど、違う。
だってこれは、好きな人と、望んでしたことの結果だから。
わかってたのに。
―――バカみたい。わたし。
・・・・そんなふうに。