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初音さんの二十日間
第3章 初音の心は母心
「ぷはっ」

吹き出した柊二くんは、うなだれる私を見ると申し訳なさそうな顔をして謝った。

「ごめん、ごめん。初音さんの説明が面白くてつい」

「こっちこそすまぬ。これならコンビニ弁当のがマシだったよね」

「そんなことないっすよ。いただきます!」

とろける肉じゃがを口に運ぶ柊二くんを見て、恥ずかしさで消えたくなる。世話焼き初音さんなんて浮かれてたけど、このざまだわよ。
やっぱり私は中途半端人間だ。

「うん、美味しい」

「無理しなくていいよ。非常食のカップメンとかあるし、そっち食べよっか」

「いや、ホントに美味いっす」

ビジュアルにドン引いて箸をつけずにいる私をよそに、もぐもぐと軟らかごはんを頬張る柊二くんって……

「もしかして、味オンチ?」

「もうー、ちゃんと食ってみて。ちょっと軟らかいけど、味は美味いっすよ」

「…そっかな」

「初音さんがこそ味オンチでしょ?がんばって作ったごはんは、頑張りが隠し味になって美味さが増すんだから」

なんて出来た子なんだ。頭脳明晰なだけでなく心根が優しい柊二くんは、ご両親にとって自慢の息子なんだろうなぁ。

言われてやっと箸をつけた肉じゃがは、うん、それほど悪くない。優しさも隠し味になるんだな。

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