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初音さんの二十日間
第4章 やらしさと、切なさと、後ろめたさと
「むむっ」

焦げた…ちょっと焦げた。

ひっくり返した玉子焼きの表面が、香ばしく色づいてしまった。が、まぁいっか。

今朝は目覚ましが落下せず5時に起きることが出来たので、私は早朝からお弁当作りに奮闘していた。昨夜のリベンジなのである。

炊飯器の電子音が聞こえて蓋を開けると、今朝は大成功!ふっくらと艶々のごはんたちが元気よく起立している。

「やれば出来るじゃーん」

すでに出来上がっていたおかずと共にお弁当箱に詰める。お箸を添えたところで柊二くんが起きてきた。

「おはよーす。いい匂いー」

甘い玉子焼きの残り香に鼻をクンクンさせる柊二くんは、今朝ももれなく寝癖つきだ。
いったいどういう寝相してんだろ、この子は。

「お弁当なんて作っちゃったからさ、お昼に食べてね」

「まーじーっすかーー!」

コーヒーを淹れながら、おべんとおべんと嬉しいなー♪と歌う頭で寝癖が揺れる。
その様子はあの頃のマシュマロちゃんのようで、私の保護者心もキュンと揺れる。

そうだよ、私はこの子に笑っていてほしいんだよなー。弁当ぐらいで喜んでくれるなら、お姉さんはがんばるよ。

「今日も残業しないで帰って来る予定だから」

「ラジャー!」

「ちゃんと勉強しててよね」

「ラジャー!」

「じゃ、出勤準備するわ」

「初音さん!ありがとう!これ、残さないで食べるから!」

お弁当を大事そうに抱えた姿を見て、本当にウチの子になればいいのに、なんて思った。


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