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初音さんの二十日間
第4章 やらしさと、切なさと、後ろめたさと
「やれば出来るじゃーん」

本日二度目の達成感。

週明けに使う会議資料作成を就業時間内に終らせて、課長のデスクにスキップで確認に向かう。

「うん、オッケー。ありがとう」

ハゲてはいないがメタボな課長に、「では、お先に失礼します」と帰宅を宣言する。
余計な仕事を押し付けられないように、急いでデスクに戻ろうとすると

「あー、結城さん、ニコニコして、デートかい?」

と聞かれた。

仕事を振られるんじゃないかと身構えると

「あー、これセクハラになっちゃう?あー、ごめんごめん。今のなしね」

焦るところが小者だなぁ。きっと課長止まりだわよ、アンタ。あ、これは何ハラかしらね。ぷぷっ。

「残念ながらデートではありませーん。では、お先にー」

さて、借りてきた資料をそっと返しに行って早く帰ろう。

開発事業部と同じフロアにある資料室に向かえば、山辺に遭遇するかもしれない。
ついこの間までは、そんな偶然に心が踊ったけれども、今日は山辺の顔を見たくなかった。

会えばなんらかの会話になるだろう。

山辺との関係に対する見て見ないふりをしていた罪悪感が、昨日の柊二くんの苦しそうな告白によってどんどん大きくなってきている。
もう見ないふりはできないほど。

お天道様の下を堂々と歩くために、するべき決断をするには、今がいいチャンスなのかもしれない。

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