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初音さんの二十日間
第8章 鬼の居ぬ間の
月曜日。

申し訳なくて恥ずかしくて会わせる顔がなく、柊二くんが起きてくる前に出勤しようとしていた。
会社に行く…というより、夜逃げに近い気分だったのに

「初音さん、もう行くの?」

玄関を開けようとしたところでみつかってしまった。しまった、ちょっと遅かったか。

「うん、週明けで会議あるから。お弁当置いてあるから食べてね」

「あの…」

「え?」

久しぶりにまともに目があったと思ったら、柊二くんの顔がうっすら赤い?

「ちょっと!熱あるんじゃないよね?」

思わず額にあてようとした右手が

「な、な、なんでもないっす」

後退りされてマヌケな感じで空を切る。あぁ、また不用意なことをやっちまった…。

「いってらっしゃい!」

「うん」

見送られての出勤が楽しかった先週が遠い日のようだ。

私の心を映したかのような見事な曇天の下、鼻をすすって駅へと歩いた。

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