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初音さんの二十日間
第8章 鬼の居ぬ間の
始業時間より大分早いオフィス街のカフェは、意外なほどの盛況ぶりだ。
スマホやタブレットでニュースをチェックするビジネスマンに挟まれ、窓際の席を陣取った。

腰を下ろした途端に大きなため息が出て、恥ずかしさに肩をすくめる。
月曜日から疲れてる、やる気のない女だと見えただろう。

実際、仕事なんてする気にならないよ。
頭に浮かぶのは週末のやり取りばかりだ。


今はもう、あの子にキスをねだり腕を絡ませ唇を煽った事を、夢ではなく現実の出来事だとはっきり認識していた。

外気をまとったままのあの子の髪は冷たくて、だけども私を潤した唇とその中身はとろけるように熱かった。

キス、上手だったな。

甘い記憶に濡れそうなカラダの芯と、嫉妬に冷える心の中と。

いや、疼いている場合ではなく、これからをどうするか、だ。

柊二くんの決戦の日まで、こんなふうにぎこちなく過ごすわけにはいかないじゃない。
心穏やかに勉強だけに集中してもらわなきゃいけないじゃない。





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