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初音さんの二十日間
第8章 鬼の居ぬ間の
こんな時間にかけてくる女の子って。

無造作にスマホを耳にあてる様子に、全神経が集中してしまう。

「うん、大丈夫だけど。うん、え?気づかなかった。…うん…うん」

嫌だ。聞き耳を立てる自分が恥ずかしい。

残りを飲み干して自室のドアを開けながら振り返ると、目元だけで『おやすみなさい』の挨拶をされた。
ふん、つまんない。


しゅんと萎れる心に再び眠れない。

か、た、や、ま、み、ず、き、ちゃん。

同級生か後輩か…。
きっと制服が似合う年頃の子には間違いなくて。
肌なんかつるつるで、水なんかバンバン弾いちゃって、どんなに短いスカートももちろん生足が当たり前で、カラコンで盛られた大きな瞳をくるくるさせて、ハタチ過ぎたらオバサンだよねーなんて残酷な言葉を吐くのだろう。

いやいや、そんな量産型ノータリンJKを好きになるわけがない。きっと控え目で頭もよくて宮沢賢治全集を胸に抱えた図書委員みたいな子かもしれない。

ちがーう、そんな地味な子似合わない!
雑貨と猫とフレーバーティーが大好きな、前髪切りすぎた天然さんじゃないかしら!


……。



いずれにしたって私なんかよりずっとお似合いの若さ溢れる彼女に違いないし、そうじゃなかったとしてもそもそも私なんて世話焼きの親戚以外何者でもないじゃない。


枕を抱えてゴロンと寝返りを打った。

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