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初音さんの二十日間
第1章 受験生がやってくる!?
喉元までこみ上げた言葉を飲み込んで、

「とにかく、バタバタしてて今日はムリ。ごめんね」

通話終了をタップしたらため息が出た。


山辺との関係は一年以上になる。

別に家庭を壊そうとか、奥さんから奪おうとか…そんなことは思っていない。

たとえば週末に会えなかったり、不意に電話をすることが出来なかったり、私との履歴を消されたりしていても、それでも平気。
それは仕方のないことだってわかってるから。

月に何回か、美味しいお酒を飲んで手を繋いで歩いて、甘くとろける時間を過ごせたらそれで満足なんだ…

けれど…


ここ数ヵ月、外で食事もお酒もなくなった。
手を絡ませて、待ちきれない熱を感じあうこともなく、まっすぐにこの部屋にきて抱き合うだけ。

なにも生み出さない、むしろ壊すだけの関係なんだから、あちこちに思い出を置いてくるようなことはしない方がいいのかもしれない。

でも寂しいよね、なんだか。



「は!おセンチさんになってる場合ではない!」



水曜日までにこの小宇宙をなんとかしなくては!
面倒なことを考えるより、いまは受験生のための心構えをする時だ!

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