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純の恋人
第5章 三人の正体
国重さんに言われて思い返してみるけれど、私が見た範囲で不審物はなかった。埃一つなく、整頓された綺麗な部屋だったはずだ。
「いえ、ありませんでした」
「ない? おかしいだろう、普通ストーカー被害にあったら、証拠固めのために保管するはずだ。どこかに隠しているんじゃないのか」
「でも、なかったんです。荷物片付ける時に、ちゃんと確認を――」
するとその瞬間、心臓が嫌な鼓動を刻む。頭が奥からじりじり痛み出して、目が霞む。
この感覚、三度目になれば分かる。欠けた記憶が、私に呼び掛けているんだ。砂嵐の向こう側にある真実を頼って、私は手を伸ばす。
「――で、黙ってたんだ」
初めに聞こえてきたのは、声だった。私は頭を抱えて塞ぎ込んで、その声に言い訳をしていた。
「だって、お姉ちゃんがすごく幸せそうにしてるのに、こんな事話したら、絶対気にするもん」
「真子さんや雅樹さんだけが純の味方じゃないだろ!? 二人じゃなくて、俺を頼ったっていいじゃないか」
私に訴えるのは、金髪の男の人。怪しいと疑っていた――田中さんだった。