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純の恋人
第6章 マスカレード
 






 テーブルの上に散らばっているのは、可愛いピンクの便箋。好きだ、いつも見ていた、そんな甘い文章が綴られている。けれどそれはいつしか徐々にエスカレートして、いつどこでご飯を食べたとか、風呂に入ったのはいつだとか、誰にも見せた事のないはずの情報まで書いてあった。

 田中さんはラジオを持って、部屋の中を探る。ラジオを使えば、盗聴器を簡単に見つける事が出来るらしいのだ。ラジオから流れてくる音楽は、皮肉にもマスカレードの曲だった。

「警察にも、話してないのか?」

 田中さんはラジオをあちこちに向けながら、私に訊ねる。青い顔をしてソファに座っていた私は、うつむいた頭を僅かに揺らす。

「行ったけど……相手にしてくれなかった。事件にでもならなきゃ、警察はなんにもしてくれないよ」

「事件になってからじゃ遅いだろ!? なんなんだよ、市民を守るのが警察なんじゃ――」

 怒りを露わにする田中さんと同じように、ラジオがハウリングを起こす。不快な音に片耳を塞ぎながら、田中さんはラジオが反応した、コンセントの差し口の前へしゃがみ込んだ。
 
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