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純の恋人
第6章 マスカレード
「開けてもいいよな?」
「開けない方が怖いよ。盗聴器なんて、いつ仕掛けられたんだろ」
「なあ、盗聴器仕掛けられるって事はさ、ストーカーは純の部屋に不法侵入出来たって事だよな? ここで寝泊まりしてたら、危ないんじゃないのか」
「うん……だから今は、女性でも泊まれるカプセルホテルとかで寝るようにして、部屋探ししてる」
「けど、それじゃ金もかかるだろ? 部屋が見つかるまでの間、純がよければだけど……俺の部屋に来ないか?」
思いがけない質問に、私は言葉を失ってしまう。そして返事の前に、差し口のカバーが開いた。
中にあったのは、コンセントとは別物の機械。ストーカーの証拠を目にすると、背筋が凍った。
嫌だ、知りたくない。見たくない。そう思うのは、当時の私。今の私はもっと見たいと思うのに、記憶は私の目を塞ぎ遠ざける。田中さんへなんて答えたかも分からないまま、私の意識は現実へ帰ってしまった。
「おい、大丈夫か!?」
国重さんはずっと私を心配していたのか、肩を押さえて声を掛けてくれていた。私が焦点を合わせると、ホッとしたのか溜め息を漏らす。