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純の恋人
第6章 マスカレード
 
「頑張る気持ちは評価するが、気を張り詰めすぎると、いざという時すぐ破裂するぞ。今は少し緩めろ。お前の姉と恋人が来たら、また頑張ればいい」

「――っ」

 国重さんは私の涙を隠すように、私を抱き締める。イドさんとは違う、男の人の匂い。そこまで甘えちゃ駄目だと頭の奥から警告が走る。

 けれど、心地良さには敵わなかった。今折れずにいられるのは、国重さんがいるからだ。イドさんを巻き込みたくないからと、恋愛感情を持っている訳でもない他の人に寄りかかるなんて最低だ。でも今はそうしないと、起き上がれない。

 やっぱり、私は弱い人間だ。そしてそれは真実を取り戻さない限り、きっと変わらない。国重さんとは恋愛感情じゃないから問題ない、なんて言い訳なんか通用しない。大事な人の気持ちより自分の安息を選んでしまった今の私に、イドさんの隣に並ぶ資格なんて、ない。

 過去の道筋は、まだ見えない。けれど未来にやらなきゃいけない事は、はっきりしている。過去へ向き合う事。イドさんへのけじめ。事件の決着。涙が引いた後の未来に覚悟を決めながら、私は今ただ泣いていた。
 
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