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純の恋人
第6章 マスカレード
「まったく……お前は、強いのか弱いのか分からないな」
「強くはないです。国重さんが絶対助けてくれるって信じてるから、頑張れるだけです」
「またそういう、恥ずかしい事を……」
「記憶を思い出せるのも、国重さんのおかげかもしれません。だって私が記憶を取り戻した時って、いつも国重さんがいる時でしたから」
国重さんは身を翻し、ベッドを背もたれにしてあぐらをかく。赤くなった顔を、誤魔化そうとしているのが目に見える。
「初めて記憶を取り戻した時、俺はそばにいなかったぞ」
「でも、国重さんと会った直後でした。どうしてかは分からないけど、国重さんは私の記憶のスイッチになってるのかもしれないですね」
すると背を向けた国重さんが振り向き、立ち上がるとベッドに膝を乗せてきた。沈むマットレスに、心臓が跳ねる。さっきまで繋いでいた国重さんの手が私の頬に伸びて、顔が近付いてくる。
「……大丈夫か? 辛い記憶を思い出して、本当は泣きたいんじゃないのか?」
頬に触れる温もりが心地良くて、突っ張っていた気持ちが緩んでしまう。国重さんを困らせると思うのに、目尻から涙がこぼれた。