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純の恋人
第2章 三人の男
いきなり三人名乗られても、正直困る。全員親しげだけれど、私からすれば全員他人なのだ。
けれど何より疑問なのは、三人が全員、私の『恋人』と名乗った事だった。一般常識からすれば、普通恋人は一人だけである。その世間に広まる固定概念が、記憶を失った数年の内に変わったとは考えにくい。
ならば、考えられる可能性は……誰か二人が嘘をついているか、記憶を失う前の私が三股していたか、だ。
年齢も職業もバラバラの三人と、私。恋人どうこうを別にしても、一体どんな知り合いだったのか。三人には共通点がなさすぎて、全く分からない。
三人の内の誰かが嘘つきだったとしても、私が嘘つきでも、どのみち真相は記憶が戻らない限りはっきりしない。この日から毎日三人は私の見舞いに来てくれたけれど、それはプレッシャーにしかならなかった。
けれど、見舞いを断る訳にもいかない。すっかり入院生活に慣れた今日も、彼らは私の元へと足を運んでいた。
彼らの見舞いに来る時間は、いつも決まっている。必ず初めに来るのは、真面目そうなスーツの人。松永 雅樹と名乗る男の人だった。