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純の恋人
第7章 真実の破片

「もしかしてひき逃げ自体が、不幸な事故だった可能性もあるのでは?」
「いえ、それはないでしょう。そもそもあなたを轢いた車、僕がすれ違う前からあなたを尾行していましたよ?」
「そ、そうなんですか?」
「明らかに強姦された後の女性が一人ふらふら歩いていて、なおかつ後ろには尾行する車。これは事件だと思って、僕は声を掛けたんです」
そこで無理に警察へ連れて行かれたら、私の運命も変わっていたんだろうか。でも、そこで立ち去ろうとした若頭は責められない。警察を拒否したのは、紛れもなく私なのだから。
「これは僕の推測ですが、犯人の目的は、あなたを病院送りにする事だったのではないでしょうか。殺しは出来ない、しかし自由の身にもしたくない。病院ならば、程良い籠です」
「そういえば、あの病院に連れて行くよう指示したのは、いなくなった通報者なんですよね」
「ええ。あれは一文字組と敵対する暴力団、狩野組の三下です。あれが指示をして、後を僕に丸投げしたんです」
私を轢いた目的が病院送りにする事なら、犯人は私を病院まで導いた人間である。つまり、消えた通報者――狩野組の人間は、犯人の仲間だ。

