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純の恋人
第7章 真実の破片
松永さんは、姉の恋人。国重さんはまだ信じていないけれど、私は松永さんが嘘をついているとは思えない。きっと、彼は私の味方だ。
宮城さんと田中さんは、私を恋人にする、という目的があったはずだ。けれど二人とも、事件の話をして以来会っていない。諦めた、というなら私が退院出来た筋も通るけれど、ひき逃げまでした相手を、そんな疑いだけで諦めるとは思えない。つまり、彼らの目的は達成していない、と言えるだろう。
「病院では、後はイドさんと国重さんに会ったくらいしか……」
「イドさん?」
若頭は奇妙な響きに、ますます眉間の皺を深める。そういえばイドさんの存在は、事件に関係ないから話していなかったっけ。
「あの、イドさんは病院で向かいのベッドに入院していた人です。記憶のない私を励ましてくれた、とても大事な人です」
「――病院で、同室?」
「ええ、そうです」
すると若頭は、私の顔を不審げに見つめる。そして呆れたように溜め息をこぼした。
「そんな馬鹿な話ありえません。どこの病院でも、普通は異性を同じ病室に入れたりしませんよ」