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純の恋人
第7章 真実の破片
いくら頭で否定しても、思い出した記憶が疑いを肯定していく。私は国重さんと顔を合わせる機会があった。事件の一ヶ月前、私は警察で何を話したのか。まだ欠けたままのその日には、強姦されても警察へ行きたくない、と思うくらいの何かがあったはずなのだ。
「病院と暴力団に繋がりを持ち、そしてあなたが病院送りになる事で得をした人間、それが犯人のはずです。そう考えれば、自ずと答えは見えてくると思いますよ」
「でも、父以外に二つの繋がりを持っている人間がいるとは思えません。暴力団なんて、それこそ遠い存在ですし」
「そういえば暴力団といえば……あなたの所属していた事務所ですが」
どうやら、まだ若頭は情報を持っているらしい。私が縋るように見つめれば、彼は面白がって口角を上げた。
「あの事務所も、狩野組の息がかかっていますね。無論、それは闇の深いところの繋がりですから、アーティストであるあなたが狩野組と関わっていた訳ではないでしょう。しかしマスカレードの人間は、手を伸ばそうと思えば暴力団と顔を合わせる機会があったと言えます」