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純の恋人
第7章 真実の破片
そう言われても、坂本さんとは一度会ったきり顔を合わせていない。頼れと言われても、簡単には会えないだろう。
「国重があなたに纏わりつくなら、それもこちらがなんとかします。なに、簡単な話ですよ。例えば今警察に捕まっている容疑者が、『国重じゃなければ自供しない』とでも言えば、彼は警察に足止めされてしまいます」
「そういう事が出来る人が、いるんですか?」
「こんな商売をやっていれば、それなりには」
多分、私が成実さんとやらの護衛を断っても、国重さんはもう引き離されてしまうだろう。国重さんは真面目な人だ、警察の仕事を放っておくなんて出来ないはず。私のためにあれだけ力になってくれたのに、利用したら捨ててしまうようで、なんだか気分が悪い。
とはいえ、今は若頭を説得する材料もない。国重さんは犯人なんかじゃない、そう言いたくても、証拠がないんだから。
事件の一ヶ月前、警察で何があったのか思い出せれば、何か変わるかもしれない。けれど私の頭は、沈黙するだけで何も知らせてくれない。
ようやく、繋がり始めた真実の糸。私は押し寄せる事実に、焦っていたのかもしれない。もつれて転ぶ可能性を、私は全く考えていなかった。