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純の恋人
第9章 彼の本性
空き地に立つミヤはぽかんとこちらを眺めていて、現場の大工さん達もざわめいている。携帯を手に取っている人もいる。喧嘩に驚いて、警察を呼んでいるのかもしれない。
掴み合いの殴り合いに、私も気が動転していた。車道から走ってきた車が止まり、ドアを開いても、全く気付かないほどに。
「成実さ――きゃああっ!」
異変に気付いたのは、両腕を黒服の男二人に拘束された時だった。抵抗する間もなく、私は車内に引きずり込まれる。
「げ、アンジュさん!!」
国重さんと争っていた成実さんが、一歩出遅れてしまうのは仕方のない事だ。慌てて車に駆け寄るけれど、私は中へ押し込まれてしまう。
「純っ!!」
すると成実さんを押しのけ、国重さんが一人の男に飛び付く。けれど、車は無慈悲だった。国重さんに捕まった男を見捨て、ドアを閉めると走り出したのだ。
そして私は目を布で覆われ、口も塞がれる。狭い車内で器用に手足も縛られると、首元に冷たいものを当てられる。見えないけれど、感触で分かる。これは、ナイフだ。
「綺麗な肌をズタボロにされたくなきゃ、妙な真似はするな。大人しくしてりゃ、怪我なく解放してやるよ」