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純の恋人
第9章 彼の本性
「後は、お楽しみにな。あんたも可哀想だよ、あんなのに目ぇつけられてさ」
狩野組の組員らしき男の人は、私にそう言い残して出て行く。そして入れ替わるように、誰かが中に入ってきた。
「……イドさん」
他には見た事のない、ピンク色の髪。見間違えだったらよかったのに、どう考えても見間違えなんて出来ない。私の前に立ち、悲しそうな表情で見下ろすのは、イドさんだった。
「乱暴な真似して、ごめんね。昨日一緒にいた男、一文字組の有名な悪い人だったから……一人じゃ危ないと思って、あの人達に頼んだんだ」
どうしてイドさんが、一見ヤクザには見えない成実さんの正体を見破ったのか。そして、どう見てもヤクザの人に頼み事が出来るのか。答えは一つしかない。イドさん自身が、一般人ではないからだ。
「イドさん……あなたは、一体何者なんですか」
「何者だなんて、変な言い方だなぁ。オレはオレだよ? 純ちゃんの恋人」
この状況で、イドさんはにっこり笑う。病院で何度も励まされた、太陽みたいな笑顔。けれど人を拉致しても全く変わらないそれが、今は恐ろしくて仕方がなかった。