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純の恋人
第10章 国重一の後悔
そしてそれを果たすなら、松永の機嫌は損ねられない。つまり純を危険に晒した犯人を野放しにする事など、絶対に許されないのだ。
病院は、息子である土居晴久さえ切り捨てれば、まだ松永とも吉川とも付き合える。病院もまた、既に土居晴久を庇う理由はなくなった。
そして病院が土居晴久を見捨てれば、狩野組が土居晴久へ力添えする理由がなくなる。後継者という後ろ盾がなければ、奴らにとってあいつはただの若造だ。
「松永 雅樹は、芯から清廉な人間だ。そして、吉川純の未来の兄でもある。不正はもう、まかり通らないぞ」
「くっ……」
俺が目配せすれば、同僚達は土居を引っ張り出していく。部屋に残ったのは、吉行と俺達だけ。吉行は腰に手を当て軽いため息を吐き、俺の頭を小突いた。
「まったく、松永の当選が確定するまで待てって言ったでしょ。まあ、彼女が無事でよかった」
「無事じゃねぇよ。結局松永頼りで、日曜まで待たせるしかなかったんだ。ったく、本当俺は無力だよ」
「問題はこれからですよ。あくまで容疑は麻薬取締法違反、ストーカーやひき逃げは、ここから追及しなければ表に出来ません」